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近年、腸内細菌の研究が進み、「腸内細菌は免疫力と深く関わっている」と、少しずつわかってきました。
前回は「ウイルスの侵入を防ぐ免疫の働き」についてのお話でしたが、今回は「免疫力をアップして新型コロナウイルスを予防する方法」について、消化器内科がご専門の内藤先生にお聞きしました。
◆新型コロナウイルス予防には、善玉菌を増やすことがカギ
今年6月、香港の大学が新型コロナウイルス感染者の腸内フローラを調べる臨床研究を行い、「新型コロナウイルス感染者の腸には、『短鎖脂肪酸』(大腸の中で腸内細菌が作る成分の一種)を作る腸内細菌が極めて少ない」というデータが発表され、「免疫力」と腸内細菌のバランスが関わっていることを示すニュースとして、注目を浴びました。
善玉菌が作る「短鎖脂肪酸」は、腸粘膜のネバネバした粘液の分泌を促す働きがあります。この粘液は腸を守るバリアの役目を果たしているため、粘液がたくさん出ていると、ウイルスや細菌、有害物質などが侵入しにくくなります。これが「免疫力」が高い状態です。つまり、腸内の善玉菌を増やすことが、私たちの免疫力を高め、新型コロナウイルスの感染予防にもつながるのです。
★善玉菌が減ってしまうと…
↓
腸粘膜のバリアとなる粘液の分泌が減り、粘液層が薄くなる
↓
腸の免疫の働きが衰える
↓
新型コロナをはじめとするウイルスに感染しやすくなる
★今、短鎖脂肪酸に注目が集まっている!
短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が作る<酸>の一種。悪玉菌の増殖を抑える作用があるほか、腸粘膜のバリアを強化して、ウイルスの侵入をブロックする働きや、がん化した細胞の増殖を抑える働きなど、さまざまな効果があることがわかってきました。短鎖脂肪酸を増やすには、善玉菌のエサとなる食物繊維を摂ることポイントです。
◆腸粘膜のバリアの低下には「免疫老化」が影響している!?
免疫力と深い関係のある腸粘膜のバリアですが、じつは、薄くなってしまうこともあるんです。
「もっとも注意したいのは、善玉菌のエサになる食物繊維不足。そのほかにも、実は加齢とともに免疫力が落ちる『免疫老化』が関わっていると考えられています。腸粘膜から分秘される粘液の中には免疫物質(IgA抗体)も含まれており、それが年齢とともに減少していきます。高齢者が新型コロナウイルスやインフルエンザにかかりやすく、重症化しやすいのも、『免疫老化』が影響しているといえるでしょう。」 (内藤先生)
こうした免疫老化をカバーするためには、今ある善玉菌を元気にしてあげることが大切。今日から、善玉菌のエサとなる「水溶性食物繊維」を意識して摂るよう心がけてみて!
下記に、水溶性食物繊維が豊富な食品を挙げてみました。もっとも簡単なのは、大麦やもち麦といった雑穀をご飯に混ぜて炊くこと。これだけでも、ぐっと食物繊維の摂取量を増やすことができますよ。納豆やめかぶ、フルーツなど、調理いらずですぐ食べられるものを利用しても。ぜひ、食事に一品加えてみてくださいね!
★水溶性食物繊維が豊富なおすすめ食品はコレ!
・穀類:大麦、もち麦など
・海藻類:わかめ、昆布、めかぶ、もずく、ひじき、寒天など
・野菜:あしたば、モロヘイヤ、オクラ、ゴボウなど
・くだもの:バナナ、リンゴ、キウイフルーツ、みかん、アボカドなど
・キノコ類:なめこ、しいたけ、エリンギ、エノキ茸など
・いも類:長芋、さつまいも、さといもなど
・豆類:納豆、いんげん豆
・その他:らっきょう、かんぴょう、抹茶など
次回は健康長寿の人たちの食生活をヒントに、「腸粘膜のバリアを整える食事」についてお聞きします。
教えてくれたのは…内藤裕二(ないとう ゆうじ)先生
京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授。同附属病院内視鏡・超音波診療部部長。京都府立医科大学卒業。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病。最先端の研究を行うかたわら、臨床の現場で30年以上にわたって消化器疾患の診療にあたる。長寿菌として知られる「酪酸産生菌」研究の第一人者。主な著書に『人生を変える賢い腸の作り方』(ダイヤモンド社)など多数。
構成・文/大石久恵